中山マコトコピーライティング起業術
■(印刷屋なのに・・・)ヌードは印刷しません。
僕が、ずっとおつきあいさせていただいている中堅の印刷会社があります。
仮に、「M印刷」としておきましょうか。
会社全体の年商、約80億。従業員数約300人。
僕と出会うまでは何の変哲もない、フツーの印刷会社でした。
名刺を見ても、M印刷と書いてあるだけ。
何が得意で、どんな考え方の印刷会社か?がまったく分からない。
仕事自体も、大手の印刷会社の単なる下請けが主な業務。
会社自体に活気もなく、僕が訪ねても、誰もこっちを見ようともしない!
まさに負け犬体質丸出しの、何ひとつ目立つところの無い、
平凡すぎる印刷会社でした。
そう・・・ある事が起こるまでは・・・。
僕はそのM印刷の役員に請われてコンサルティングをスタートさせました。
社長に依頼して、中堅と若手の「やる気あるメンバー3人」に、
僕のチームに入ってもらい、一気に促成栽培をスタートしました。
ベテランの社員(オジサン達)は、「また社長の道楽が始まった!」と、
白い目で見ていましたが、そんなのお構いなしで、
徹底的にある事をやり続けました。
それから半年。
その会社の商業印刷部門の売り上げは、21億円から29億円に増えました。
たった・・・・半年。
利益率も23%ほども向上し、僕のチームにいた、
3人のメンバーには社長賞が手渡されるまでになり、
結果として僕のやり方は全社に波及し、今や、
全社員の名刺には、その「ある事」が書かれています。
部門の全員が、ある”たった一つの名刺”を使って、活動をした結果です。
会社全体の雰囲気も圧倒的に明るくなり、
朝から晩まで活気溢れる会社になりました。
さて、その名刺とはどんな名刺でしょうか?
その名刺が、たった半年の間に、一体何を起こしたのでしょうか?
それは・・・・
キャッチフレーズを載せただけ。
それも・・・
”(印刷屋なのに・・・)ヌードは印刷しません。”
と言う刺激的なキャッチフレーズです。
そして、それを、名刺や、僕がオリジナルで開発したあるツールなど、
いくつかに落とし込み、全社的に使っていったんです。
どうしてこの「ヌードは印刷しません。」と言うキャッチフレーズをつくったのか?
それには、ちゃんとした理由があります。
それは、M印刷が本来持っていた、「企業としての思想」だったからです。
この会社は元来、ヌード写真集などの印刷は一切受注していませんでした。
先々代の、創業社長がとても嫌ったからです。
創業社長の口癖は、「女の裸で仕事をするな!」でした。
研究肌の、ある意味堅物の先代は、いつもそれを口にしていたそうです。
でも、社長が代替わりし、年数を重ねるうちにその考えは風化し、
忘れ去られて行きました。
風化し、形骸化していました。
でも、その気分はずっと全社的に残っていて、
営業スタッフはものすごく苦労していました。
だって、今の時代、お堅い週刊誌だって水着グラビアぐらいはありますよ。
つまり、「女性で商売するな!」と言われたら、本当にやりようがない。
お堅い、まじめな仕事しか出来ません。
これ、営業スタッフにとっては、難行苦行です。
で、僕と僕のチームのメンバーはそれを掘り起こし、逆手に取ったんです。
その事を、
”ヌードは印刷しません!”
と名刺に明示することで、M印刷の「こだわり」がハッキリと、
クライアントや見込み客に伝わるようになったんです。
その「ヌードは印刷しません!」と言う思想を正面切って伝える事で、
他の印刷会社が、売り上げのために、
女性の裸でも何でもバンバン印刷を受注するやり方との対比が際だちます。
つまり、M印刷の「企業としてのアウトライン」が、
ハッキリと見えてきたんです。
加えて、このキャッチフレーズはインパクトがあります。
だから話題になりやすい。
名刺交換をしても、
「え?コレどういう意味?教えて?」って間違いなく訊かれます。
そこからすでに良好なコミュニケーションが始まってる訳です。
クライアントからしても、どうせ同じような能力、金額なら
「少しお堅いくらいの、こだわりのある会社」の方が良い!
そう考えるのは当たり前の事です。
利益率にしても同様です。
大手印刷会社や広告会社の下請けから一気に脱し、
直接のクライアントがドンドン増えていく訳ですから、
利益が向上するのは実に当然の事。
下請け仕事が減り、利益効率の良い仕事が激増する訳ですから、
利益率が圧倒的に上がるのも当然です。
会社の財務体質自体も劇的に良くなり、
結果として資金繰りも飛躍的に楽になりました。
こうしてこのM印刷、一気に生まれ変わったんです。
これが、生まれ変わった名刺の威力です。
たった一枚の名刺が、会社の経営、ビジネスの構造を変えてしまう。
まさにそういう事なんですよ。